
一本一本の木を見極めて骨組みと意匠を整えるのが大切
木の家のもっとも重要な骨組みを自分の頭と手で作り上げるのが大工だと思う
高温乾燥材は使わない、接着剤で貼り合せない、適材適所も大事な作法
施主の為にはもちろん大工技術を未来に継承したいから、またリフォームには本当の大工技術が必要
軒の出、土壁、障子、土間、格子、漆喰…こうしたものは日本の風土から生まれ、すべてに“そうであるべき”という意味がある
昔から受け継がれてきた夏の知恵(風通しと日除け)に集熱と適度な段悦を組み込んで冬の備えとする
柔らかい、優しい、温かい、古びない、そして家には庭(土)があり緑(木)があるべきと思う
数値評価の前にもっと大事にすべき、構造の在り方がある、それが力を素直に流す木組みと建物のバランス
そこに暮らす人の居心地を中心に据え、支線・空間・素材・かたち・色・動きなどを考えると“シンプルで美しい”にたどり着くと思う
きっと人の本質は変わらないが社会や暮らしは時代とともに変わっていく、自分たちのこだわりやいいと思う事を守りながらその変化に対応するのがプロだと思う
好き嫌いというだけでは片づけられないこともあります。わかりやすくとてもシンプルな表現として使っています。
木が好き | 新建材が嫌い |
技術のある大工が好き | 誰でも現場にいれば大工と呼ぶことが嫌い |
国産材が好き | 高温乾燥が嫌い |
土が好き | ペタペタ貼っただけのものが嫌い |
手加工が好き | 機械に頼りすぎることが嫌い |
人の手(気持ち)が入ったものが好き | 簡単に流されたものが嫌い |
シンプルなデザインが好き | コテコテデザインが嫌い |
格子が好き | 構造に負担をかけるデザインが嫌い |
軒の出がたっぷりある家が好き | 日本の風土を知らない家が嫌い |
見た目も機能も障子が好き | 高気密が息苦しい |
素朴な丸太が好き | 何でもかんでもバリアフリーが嫌い |
職人が好き | 数字による評価ばかりすることが嫌い |
「木造建築をするという事は「木を見る事から仕事が始まる」、「木を見る」ということは「山を見る」ということ。
出来るかぎりいろいろな山へ足を運び、様々な木を実際に目で見ます。
「まず、山へ行こう」そんなところから始まる家づくり。木造建築の主役は何と言っても「木」にあります。
家を建てる人も自分の建てる家に使用される木が「どこのどんな木なのか」を知って家づくりに積極的に参加していただきたいと 思っています。
木の家づくりを考えるなら、まず山へ行って感じて欲しい。木の家の一員となった柱や梁の一本一本が生まれ、育てられ、製材された吉野の山へ行き、目で見て肌で感じて欲しいと思います。
吉野の杉の魅力をより身近に知っていただきたいと願っています。
吉野での感動は体験した人にしかわからないものがあります。木の家づくりはまず山へ!
春には「歴史の証人へ会いに行く」 人の手で400年育てられた杉を少し山を登り見に行くというツアー
秋には「木の家の柱や梁が生まれたところ」 吉野杉の間伐伐採を見学するツアー
2013年秋は、山での伐採 木を製材し、材として加工場で刻まれ、家づくりに使われたところまで。
いつもはもくもく館で見る流れを今回は一通り見て体感できるツアーとなりました。
木の香り、暖かさ、柔らかさ…それらに包まれて生活する喜び。そんな木のことをもっと知って欲しくて建主たちと山へ行く。100年200年と気の遠くなるような歴史の中で生きている木々。それを守り育てている代々の林業家たち。
建主に性格や好みがあるように木にも個性やクセがあります。
生きてきた歴史を感じ認め合う事。この出会いが家づくりのスタート建主と木との共存の始まりです。
建主の要望を聞き、土地を調べて私たちは間取りと木組みを考えます。
土地と生活スタイルに合った美しい木組み、これが羽根建築工房の設計の特色です。
私たちはいつも1つのプランを提案します。
でも、要望に合わなかった場合は再度プランを練り直し、また新たに1つのプランを提案します。
建主の家族のためだけの、その土地ならではのプラン。
私たちが自信をもって造らせていただきたい唯一のプランを求めて何度でも。
家はシンプルな方がいいと考えています。素材そのまんまの良さを気取らずにおおらかに包み込むように造れば、彩りは生活が与えてくれるから。
そんな家を建主と一緒に造って行きたいと思います。
建主とわたしたち、建主と木が出会い、これから一生のおつきあいが始まります。
家が完成してからも私たちはちょくちょく顔を見せにお伺いする事でしょう。なぜなら、あなたの住まわれている家はわたしたちもお気に入りの家なのですから。
家づくりに使う木材は、大工さんがすべて加工するのが当たり前。 もしかすると、こんなふうに思っている人が多いかもしれません。
でも現実は違います。とくに構造材と呼ばれる建物のフレームになる木材のほとんどは、プレカット工場と呼ばれる工場で加工されて建築現場にやってくるのがここ10年くらいで(2000年頃から)急速に当たり前になってきました。
こうした「工場プレカット材」にもよい点はあると思いますが、私たち羽根建築工房は「大工による加工(手刻み)」にこだわっています。その理由を以下に述べます。
家づくりにおいて「棟上」という工程は、竣工と並んで最大のイベントであり、とくに大工にとってはもっとも“意気”を感じる作業です。
その棟上に使うのは構造材であり、その構造材が工場で機械によって加工されたものではなく、自分の手で刻んだものであることで、大工の意気は大いに上がることになるのは想像していただけるはずです。
もちろん工場プレカット材であっても、大工はそのプライドを賭けて棟上に向かっていくのですが、その家づくりにこめられる大工魂は違ったものになると思います。
私たちは、大工の意気と腕を最大限に発揮してもらう家づくりが「良い家」をつくる最大の条件だと考えるので、よほどの理由がない限り、構造材は大工自身の手で刻んでもらうようにしているのです。
私たちがつくるのは、日本の木の優しさ、美しさ、香り、そして迫力を存分に感じられるような家です。
木を見せることを「現し」などと呼ぶのですが、そうした「現しの家づくり」を繊細に、緻密に、豪快に行うためには、工場プレカット材を使うのは限界があります。
優秀な大工は目の前にある木材をじっくりと見て、それをどこに、どのように使えば「最良の木づかい」になるかを見抜きます。完成したときの映像を頭に思い浮かべながら、木を選び、木を刻んでいくのです。
だから、大工にとって「構造材をじっくりと見る時間」が重要になります。
工場プレカットという方式では、そうした時間が十分に得られないのです。
工場プレカットという方式では、「加工の方法や種類」に限界があります。
したがって、工場プレカット材を前提とした家づくりでは「工場プレカット加工の方法や種類」の範囲の中で木組みや空間を考えていかざるを得ません。
「本当はこうやって組んだほうが美しいのに…」と思っても、プレカット工場では不可能な加工であれば、それを諦めなければなりません。
「美しい木組みや空間」といった感覚的な話に限らず、「こうやって組むとさらに強い構造になるはずなのに、工場プレカットでは…」といった性能の話にも関わってきます。 つまり、手刻みによる施工の自由度の高さが設計の自由度を担保することになるわけです。
設計する立場にある人が「性能のことも含めた、理想的な木組みや空間」を追求できるということです。
少し前まで、「棟梁」と呼ばれる人はレベルの高い手刻みができるのは当たり前でした。
それが日本の家づくりにおいては当たり前だったからであり、その技術が進化しながら受け継がれてきたことによって美しい日本の木の家はつくられていたのです。 それが、いまのような「工場プレカット材の時代」が当たり前になってくれば(90%以上にもなっているそうです)、手刻みができる大工は消えていきます。
すでにきちんとした手刻みができる大工は高齢の人に限られ、若い大工にはその修行をする機会がなく、日本の高い大工技術は消えつつあります。
日本人のDNAには「日本の木」の様々な情報が刻み込まれていると感じます。そしてそれには「木の家での暮らし」が果たした役割は極めて大きいと思います。
大工技術が変質し、日本の木の家が失われてしまえば、日本人の精神文化に大きな影響を与えてしまうと私たちは信じています。だから、まだ間に合ううちに、手刻みの技術を残していこうと考えているのです。
すでに住宅は「ストックの時代」に入っています。
質の高い新築住宅を少しずつ建てながら、膨大にある既存住宅について、質を向上させるリフォームを進めていく時代が訪れていますので、新築よりもリフォームのほうが圧倒的に大工の高い技術が必要です。
既存住宅のほとんどは木造ですから、その木の骨組みの適切さをしっかりと読み取ることが求められますし、リフォームを進めていくにあたっても、高い「手刻みによる応用力」が必要になってきます。
工場プレカットの新築ばかりやっている大工では、その応用力が身につきません。見た目をきれいにすることはできるでしょうが、耐震性を向上させるような本質を改善するリフォームはできないはずです。
この問題は、住宅業界の中でもほとんど議論されていませんが、今後の日本の住宅を考えていく上で、実はとても大きなものだと思います。
ずっと長い間、日本では「森や木」に尊厳を感じ、感謝し、その恩恵を有難く頂戴するという文化が育まれてきました。
その循環や関係性の中に大工があり、木の家がありました。
これらがすべてつながることで、日本人は森や木とうまく付き合ってきたのです。
このつながりが様々な形で切れてしまっているのが現代社会でしょう。
日本の森や木を残し、うまく付き合っていくためには様々な知恵を絞らないといけないと思います。そしてその中に「手刻みの大工技術を継承し、美しい日本の木の家をつくる」ということが不可欠だと思います。
私たちだけでは微々たる動きですが、同じ問題意識を持った工務店や建築家がつながりはじめ、大きな動きになってきました。私たちはこの動きをこれからも続けていきます。
「左官仕事って言うのは”奥深いで~”。大工仕事より奥深いかも…」
これは羽根代表の口からこぼれた一言です。「左官屋は材料をつくることができて一人前」とはベテラン左官職人の一言。気候や天候によって、水加減等や乾き具合が変わる…。そして、それによって、色の変化さえも起こってくる…。全てを把握しきれるものではないこの「左官仕事」。
機会があればあなたも一度体験してみませんか?
以下、当社で行った左官に関してのさまざまな試みを掲載しております。
八尾の現場(ほたるの里の家)にて、昔ながらの製法で本格的な砂漆喰用漆喰をつくり使用しました。
乾燥角又を水につけ、糊を出します。水につける時間が長ければ長い程乾燥角又の固形部分がどんどんなくなっていきます。
ドラム缶に上記の角又を溶かしたものと水に溶かした粉末糊(粉ぎんなん)とにかわを入れ、水を足しながら煮ます。粉末糊はさらに粘性を強化するために入れます。
糊の煮益を4mm目の篩(ふるい)に通して、ほぐした麻スサに混ぜます。残った糊のカスは再度釜に入れて煮返します。
煮液に麻スサとガラスウールを混ぜます。麻スサは大きなクラック防止のため、ガラスウールは小さなクラック防止のためです。割れを防ぐため麻スサを入れる際にも糊を利かせないとスサが上手く付着しません。
消石灰を篩(ふるい)に通します。塊になった石灰の粒は取り除きます。消石灰に糊スサを混ぜ、練上げて漆喰を作る事は左官の原点です。
壁が仕上がった後、雨水をはじかせるためオイルを入れます。
鍬、攪拌機でよく練り、スサの混ざり具合と柔らかさを調整して漆喰を作り上げます。
こちらの物件(おおきな屋根の家)はお施主様のご厚意で一般の方に実際の現場で左官体験をしていただく機会を与えていただき、2004年月4月4日~10日の一週間、 延べ14人の方に左官体験をしていただきました。みなさん、お疲れ様でした!
古民家解体時に出た土壁を新たに練り返し、他の物件の外周部の壁に使用しました。
土は地方によって粒子、粘性等が違うため、その場所の風土に見合う土があります。
今回は解体現場と新築現場が近いこともあり、風土に見合った土をつくることができました。
固まった土をほぐすのに、手や足では大変なので、ユンボを使って細かく砕きました。
細かくした土には瓦の破片や大きな石が入っていた為、ふるいにかけて不純物を取り除きました。土埃がすごかったので、水をかけながらの作業となりました。
新しくいれた藁は無農薬藁を使用しました。道具は押し切りと呼びます。藁は6センチ~10センチに切りました。
藁をたくさん入れながら、足で踏み練ります。足で踏めなくなってからは、最終ユンボでかき混ぜ練りました。
建材屋さんで寝かしてある土を混ぜ合わせました。
最後は散水して土を寝かしておきます。
練り終わった頃は泥だらけになりました。
いよいよ塗り付ける日。寝かしておいた土を運ぶ前に、備中で藁の分量や土の固さを調整して練ります。
土さしと呼ばれる道具で土をこて板に投げます。
厚みは片面3センチほどです。
裏側は竹からコブ状に土がめり込んでいます。竹小舞と一体になるように裏側にめり込んだ土を少し水が引いてからコテで撫でておきます。
壁が乾いた後、裏側を塗ります。このことを裏を返すと呼びます。