HANE-ken standard

ここにご紹介するのは、一軒の具体的な住宅ですが、そこには私たち羽根建築工房における 「住宅設計に向かうときの思想/姿勢」が凝縮されています。
この「HANE-ken standard」のありようをご紹介することによって、私たちがどんな考え方をもって住宅設計を行っているかをお伝えしたいと思います。

住宅設計における5つの原理~アントニン・レーモンドの思想を引く

日本の建築を愛し、近代建築の礎を築いた建築家アントニン・レーモンド。
私たちは、彼が提唱した住宅設計における次の5つの原理に深く共感しています。

  1. 1.Direct
    直裁であること。本来的な意味で合理を求めること。
  2. 2.simple
    単純、簡素。無駄をそぎ落とすこと。
  3. 3.Honest
    正直、誠実。ごまかさないこと。
  4. 4.Nature
    自然、風土とつながること。
  5. 5.Economy
    価値あるものだけに手間とお金をかけること。

「HANE-ken standard」は、この5つの原理に従って設計されます。

右の写真は、HANE-ken standardの軸組み模型。
この骨組み、プランに私たちの設計思想がすべて詰まっています。

HANE-ken standardの軸組み模型

骨組み=意匠構造体を現し、それが意匠(デザイン)となる。間伐丸太が美しい空間をつくる。

アントニン・レーモンドが日本の木造住宅を見たとき、彼の感性がもっとも震えたのは「構造即意匠」の美しさと合理性であったと思われます。それは“Direct”であり、“Simple”であり、さらには“Honest”でもあるからです。
日本の杉や桧、松といった建築用材は、極めて美しく(ベイマツなどと比べれば一目瞭然です)、それを見る人に深い安心を与えてくれます。そうした美しい木材を見せない近年の家づくりはわが国の建築文化、生活文化に大きな損害を与えているとさえ思います。
そして「HANE-ken standard」における特徴が、間伐丸太を屋根の骨組みに使うということ。 いま、使われないことで問題になっている間伐材は、私たちにとっては宝物に見えます。合理的に“Direct”にその間伐材を磨き丸太として使うことで、さらに美しい、手づくりの木の家が生まれるのです。
「HANE-ken standard」における軸は、この「骨組み=意匠」にあります。

“構造即意匠”がわが国の木造住宅の何よりの特徴であり、美しさの根源です。
そして間伐された磨き丸太を使い、見せるのがHANE-ken standardの特徴。

「HANE-ken standard」における特徴“構造即意匠”

「HANE-ken standard」における特徴“構造即意匠”

材料素の材料=素材を使う。素性のわからない、ひねくり回した材料は使わない。

車やパソコンを木や土、石でつくるべきだなんて決して思いません。でも、住まいにプラスチックやニセモノの材料、接着剤で貼り合わされた材料を使うことに、どうしても私たちは合理性を感じないのです。ただ安いだけ、ただ均一であるだけ、ただ薄っぺらな美しさを備えているだけ…。なんにもいいことはないと思うのです。
日本で育った木を“Simple”に、“Drect”に使う。これもまたごく自然で当たり前なことでしょう。先にも述べたように、この国で育つ杉や桧たちは、深い美しさ、強さ、耐久性を備えているからです。
木、土、石といった素材を正直に見せていく。そうした素材は住むほどに味わいを増し、落ち着いた美しい空間をつくり出してくれる。そんな住まいが“Economy”であることは言うまでもありません。

土壁

湿度の高い日本の気候では、土壁は最適な選択です。しかし、竹小舞を編んでつくる従来の工法はコスト、工期共に大きな負担になってしまいます。かといって石膏ボードの上に薄く塗った漆喰や珪藻土で土壁の替わりはできません。
竹とネットを組み合わせた「竹小舞ネット」は、気密性を損なわず自然な通気性を有した土壁を現代の工法で実現したものです。従来の土壁と違い、大壁方式やパネル工法との組み合わせも可能で、通常の内断熱に対応しています。
下塗り、中塗り、上塗りの3工程で、塗り厚は総計約30mmで、十分な調湿性能が発揮されます。仕上げは漆喰、珪藻土、じゅらくなど選択できます。

●木のこと

構造材はすべて吉野産の杉、桧
吉野の林業は密植により、年輪が細かくまっすぐ通た木が育ちます。計画間伐により伐採し、 山で葉枯らし乾燥し、製材して3ヶ月~6ヶ月桟積み乾燥の後、建築用材となります。
土台に桧の赤味材を使用
防腐性能、防蟻性能が高く、めり込み強度が杉より高いためです。
注:桧と言えども、白太部分はでんぷ質が多く腐りやすく、蟻害にも遭いやすいので注意が必要です。
柱や梁に杉の芯持ち材を使用
大きな力のかかる部分に外側の目の混んだ白太のところがくる為、強度的に有利なるからです。背割りは入れずに天然乾燥させているので、自然な割れが入りますが、乾燥とともに強度的はむしろ強くなっていきます。
小屋組みには「間伐材杉丸太」を使用
吉野ならではのまん丸で元末の口径差の少ない良質な材を、皮むいて丸太のまま使用します。口径の細く節ある間伐材は使い道が少なく山に捨てられことも多いですが、こうした活用法で美しく味わいのある空間を構成することができます。

●左官のこと

外壁はドロマイトプラスターを主材料とした「かきりしん」
耐水性、耐候性、耐久性に優れ、凹凸のある表面が豊かで落ち着きのある表情をつくり出しています。
内壁は竹下地に土を塗って仕上げる「羽根建壁」 である。
昔ながらの竹小舞を編んで土壁を作るより、現代の家づくりにも順応する土壁となり、土の元来から持つ調湿性、保温性、防火性能を得ることが出ます。柱間には断熱材を施せるので、「省エネ等級4」に相当する断熱性能も確保できます。
土間は小石表情が優しい、三和土を雰囲気もつモルタル仕上
モルタルと言えどコテで押えてしまうのはなく、色むらある小石を散りばめて丁寧にノロを拭き取って仕上げると、自然な風合いの土間ができます。

間取り心地よい暮らしの本質をとらえ、無駄をつくらず、柔軟を備える。

私たちが「間取り(基本プラン)」を考えるときの基本は“Simple”という発想。

しかし、単純化を追求するほど、精緻な計画が必要になってきます。無駄を省くということは「ちょうどいい間取り、寸法」を探していく作業になるからです。無駄を省きながら、ゆるやかに住む人の暮らしに合わせられる柔軟性を備えることも「HANE-ken standard」の特徴です。

また、間取りを考えるときには光や風、窓からの景色などの自然の要素も十分に考慮します(このあたりは「パッシブデザイン」のページをご覧下さい)。
そうして出来上がった間取によって、そこに暮らすことがとても心地よい空間が生まれ、それはもちろん“Economy” な家づくりになるのです。

「HANE-ken standard」の「ちょうどいい間取り、寸法」

小さな家でいい、小さな家がいい

住まいに本当に必要なものは何か?本来の住宅設計とは、そのことを追究するものであるはずです。私たちが考える「小さな家」とは、豊かな空間がありながらも、暮らしに必要なものがそこに凝縮されている住まいのことを指します。結果、従来考えられている住まいは大きすぎることに気がつきます。

そうした住まいでは、日々の暮らし、周辺の自然環境や四季の移ろいと建物との一体感が生まれます。また家具や光熱費、メンテナンス費用など、生活のコストも小さく抑えることができます。そうした身の丈に合った“賢い住まい”がいつか日本のスタンダードになればいいなと思います。

「HANE-ken standard」の「ちょうどいい間取り、寸法」

玄関へのアプローチ
⇒ 緑の小道を歩くようにしつらえ、内部への期待感ふくらませます。
玄関脇の壁
⇒ リビングへの視線と西日をさえぎります。
南面の土間
⇒ 冬は日があたり暖かい熱を蓄え、夏は日陰になってひんやりと涼しいタタキ風の空間となります。
和室に設けた地窓
⇒ 熱は採り入れず、風と景色は採り入れる、伝統的な工夫の窓です。
納戸等を西側に配置
⇒ 夏の西日による熱の侵入を緩和します。
1階に大きな納戸
⇒ リビングまわりがスッキリと片付きます。
台所の勝手口
⇒ ゴミを出したり、菜園に収穫に出る場所として便利です。
浴室
⇒ 冷たくならず、濡れてもべとつかず、すべりにくい「十和田青石」の床と腰壁。また天井は壁と心地よい香りの杉の赤身板です。
浴槽
⇒ 水に強い「高野槙」でつくります。メンテナスできるように床に置く仕様になっています。

構造計画構造計画の基本はムリを排除すること。“Simple”な木組みは力をスムースに伝える。

地震や台風に強い家にする時、何がもっとも大切か?
建物や家具の荷重で変形しない家にするとき、何がもっとも大切か?
それは「無理矢理、強引を排除する」ということです。建物を複雑にして凸凹をつけるほど、間取りを複雑にするほど、力の流れも複雑になり、どこかに無理が生じます。
建物をできるだけ正方形に近づけ、2 階と1 階の壁を揃え、耐力壁をバランスよく配置する。その基本ルールを守り、うまい間取りを考えていくのが本来の構造計画であると私たちは考えています。

落ち着いた美しい住まいのカタチ無理をしない構造計画を実現させれば、自然とその住まいのカタチは
落ち着いた、美しいものになるのです。

“Simple”な木組み素直な構造となった骨組みは、棟上げの様子を見ると
その安定感がはっきりとわかります。

パッシブデザイン自然とつながる住まいにする。電気や化石燃料に頼らずとも、心地よい住まいになる。

人工照明と陽光の明るさ、どちらが心地いいか?
クーラーをかけた部屋と風がそよぐ木陰、どちらが心地いいか?
エアコン暖房と日向ぼっこ、どちらが心地いいか?
人にはそれぞれ好みというものがあるので、すべての人が「後者」を選ぶわけではないでしょうが、私たち羽根建築工房のメンバーは全員「後者」を心地いいと感じます。そして「建物のあり方=設計」を十分に考えれば、その心地よさを実現することができます。
そんな「建物のあり方によって四季を通じて心地よい住まいにする設計」のことを「パッシブデザイン」と呼びます。パッシブデザインによって生み出された住まいは、まさしく“Nature”に溶け込んだ住まいなのです。

「パッシブデザイン」

夏のデザイン

風通しと日射遮蔽に最大限の工夫を行うことで、エアコンに頼らない夏の住まいになります。最近の暑い夏の日中にまったくエアコンなしで済むというのは言い過ぎでしょうが、エアコンをかける時間が相当に短くなり、風を感じながら夏という季節を楽しめるような暮らしが実現できるはずです。また、ムク材や竹小舞ネットの土壁による調湿性が、ジメジメ感を相当に低減してくれます。

冬のデザイン

必要な断熱を施し、屋根での太陽熱を集め、その熱を床下に送って床暖房する「ソーラーれん」を設置することにより、最小限の暖房で済むような、とても心地よい冬の住まいとなります。このシミュレーションでは、最高室温=21.1℃、平均室温=16.7℃、最低室温=14.3℃になっており、よほど寒がりの人でない限り、薄手のセーターやフリースをはおるくらいで過ごせるはずです。

「建物のあり方によって四季を通じて心地よい住まいにする設計」

HANE-ken standard の仕様

  部位 仕上 備考
外部 屋根 カルバリウム鋼板ア0.4
空気集熱式床暖房
外壁 かきりしん 掻き落とし仕上げ
建具 アルミサッシ ペアガラス
基礎 鉄筋コンクリート ベタ基礎
断熱 屋根 フェノバボード 高性能フェノール樹脂
外壁 パーフェクトバリア ペットボトル再生
フェノバボード 高性能フェノール樹脂
  場所 天井
内部 玄関 柳生の細道 大地の息吹 野地板アラワシ
広間 杉板 ア30 大地の息吹 野地板アラワシ
和室 杉板 ア30 大地の息吹 野地板アラワシ
台所 杉板 ア30 SUS板張 杉板 ア30
納戸 杉板 ア30 大地の息吹 杉板 ア30
便所 杉板 ア30 大地の息吹 杉板 ア30
洗面所 杉板 ア30 大地の息吹 杉板 ア30
浴室 十和田青石 杉板 ア15 杉板 ア15
自由空間 杉板 ア30 大地の息吹 野地板アラワシ

HANE-ken standard の価格

  工事内容 価格
1 仮設工事 723,000円
2 基礎工事 866,000円
3 木工事 6,418,000円
4 板金・樋工事 441,000円
5 防水工事 430,000円
6 左官工事 2,985,000円
7 石張り工事 178,000円
8 金属製建具工事 484,000円
9 木製建具工事 555,000円
10 雑工事 670,000円
  工事内容 価格
11 れん/そよ風工事 1,205,000円
12 電気工事 1,096,000円
13 給排水工事 1,736,000円
14 ガス工事 123,000円
15 諸経費 1,125,000円
  消費税(8%) 1,522,800円
  合計 20,557,800円

別途:設計料、地盤改良、外構工事、空調工事、アンテナ工事、置き家具、カーテン、防蟻処理、 上下水道申請費・市納金等、近隣対策費、登記等

HANE-ken standard 作り手面々

部位 会社名 住所
基礎 イマイ総合建築 大阪・交野
木材 ウッドベース 奈良・吉野
板金・樋 石附板金工作所 大阪・守口
左官 井上左官工業 奈良・奈良
サッシ 三協テック関西 大阪・東大阪
キッチン 羽根建築工房 大阪・旭区
ソーラーれん もくよう連/環境創機 浜松/国立
給排水 西設備 大阪・藤井寺
洗い 光建装社 大阪・堺
足場 服部仮設 奈良
部位 会社名 住所
大工 羽根建築工房 大阪・旭区
防水 西牧防水 兵庫・尼崎
石張 中野産業/黒瀬タイル 秋田・大館/大阪
木製建具 安藤建具 大阪・城東
畳・橋本 大阪・大東
電気 西嶋電気 大阪・堺
ガス 江口設備 大阪・大阪市

HANE-ken standard 羽根建築工房 経歴

1998 年 羽根建築工房設立 大阪市  
1999 年 (有)羽根建築工房 大阪市  
2000 年 ヤマ・ライブラリー新築工事 西宮市 北澤建築設計事務所
2002 年 木材フェア 参加 大阪市 フロンティア+羽根建築工房
2002 年 木構造住宅研究所新築工事 大阪市 Ms建築設計事務所
2003 年 CHILD 工房新築工事 甲賀市 羽根建築工房
2004 年 六甲の家新築工事 神戸市 N設計室
2005 年 オモヤ・ハナレ新築工事 奈良市 八百光設計部+下山建築設計室
2005 年 G邸新築工事 西宮市 木曾三岳奥村設計事務所
2006 年 Y邸新築工事 枚方市 広渡建築設計事務所
2007 年 Y邸移築再生工事 奈良市 藤岡建築研究室
2008 年 東住吉の長屋改修工事 大阪市 羽根建築工房
2009 年 大美野の家新築工事 堺市 堀部安嗣建築設計事務所
2010 年 S邸新築工事 芦屋市 レミングハウス
2010 年 高山町の家新築工事 生駒市 一見設計工房
2012 年 通り土間のある家 堺市 羽根建築工房
2013 年 絵画を楽しむ家 大東市 羽根建築工房
2014 年 鼓ヶ滝家 川西市 羽根建築工房

棲香/吉野杉プロジェククトについて

長い歴史があり、わが国の林業技術を先導してきた吉野林業。そこで生み出される良質の吉野杉は、緻密で均一な年輪、美しい色合い、そして高い強度など、優れた特徴を持っています。
そうした吉野杉のよさをさらに広く知っていただき、「地域材で建てる、確かな技術での木の家づくり」を普及させていこうとして立ち上げたのが「棲香/吉野杉」という団体です。

HANE-ken standard は私たち羽根建築工房の設計思想を象徴し、また具体化したものですが、そこでは何よりもまず「良質で美しい構造材」の存在が大前提になります。吉野杉の普及、そして地域材を使った木の家の普及を図るために、木材供給サイドである(株)ウッドベースとも議論を重ね、生まれたのが HANE-ken standard なのです。

奈良 吉野の材木屋 株式会社ウッドベース

HANE-ken standard へのメッセージ 住まいと環境社 野池政宏

これからの日本の住まいは、しっかり地域材を使い、自然のエネルギーをうまく活用して心地よさと省エネルギーを実現し、つくり手の技術が十分に活かされた手づくりの家になっていくと確信しています。そうした住まいが、その家に暮らす人はもちろん、未来の社会を豊かに、幸せにするものだからです。

このHANE-ken standard には、そのすべてが詰まっています。私はこの取り組みにおける室内環境や省エネルギー性能についていくつかのアドバイスを行い、様々な検討を加えてきましたが、日本人が持っている、自然に対する繊細な感覚をとらえた、極めて優れた室内環境が実現されることになったと思っています。
きっと、そのことは住めばわかっていただけるはずです。

スタッフ紹介