
パッシブデザイン/Solar 高窓の家
1.手刻みで木組みの家をつくるのが本当の木の家だと思う
一本一本の木を見極めて骨組みと意匠を整えるのが大切
2.墨付け手刻みできる第九を本当の大工とと呼びたい
木の家のもっと重要な骨組みを自分の頭と手で作り上げるのが大工だと思う
3.日本の木をちゃんとした方法で使う
機械乾燥剤は使わない、接着剤で張り合わせない、適材適所も大事な作法
4.専属大工を抱え育てる
施主のためにはもちろん、大工技術を未来に継承したいから、また再生・改修には本当の大工技術が必要
5.日本という風土に合った家のあり方にならう
軒の出、土壁、庄司、土間、格子、漆食・・・・こうしたものは日本の風土から生まれ、
すべてに”そうであるべき”という意味がある
6.パッシブデザインを考える
昔から受け継がれてきた夏の知恵(風通しと日除け)集熱と適度な蓄熱を組み込んで冬の備えとする
7.木と土がすき
柔らかい、優しい、温かい、古びない。そして家には庭(土)があり緑(木)があるべきと思う
8.力を集中させない木組みの流れとバランスを考える
数値評価の前にもっと大事にすべき、構造の在り方がある、それが力を素直に流す木組みと建物のバランス
9.シンプルで美しいデザインがいい
そこに暮らす人の居心地を中心に据え、視線・空間・素材・かたち・色・動きなどを考えると
”シンプルで美しい”にたどり着くと思う
10.現代的なニーズを上の9つにうまく組み込む
きっと人の本質は変わらないが社会や暮らしは時代とともに変わっていく、自分たちのこだわりやいいとおもう事を
守りながらその変化に対応するのがプロだと思う
木が好き | 新建材が嫌い |
技術のある大工・職人が好き | 誰でも現場にいれば大工と呼ぶことが嫌い |
国産材が好き | 高温乾燥が嫌い |
土が好き | ペタペタ張っただけのものが嫌い |
手加工が好き | 機械に頼りすぎることが嫌い |
人の手(気持ち)が入ったものが好き | 流れ作業的に作られたものが嫌い |
シンプルなデザインが好き | コテコテデザインが嫌い |
格子が好き | 構造に負担をかけるデザインが嫌い |
軒の出がたっぷりある家が好き | 日本の風土を知らない家が嫌い |
見た目も機能も障子が好き | 高気密が息苦しい |
素朴な丸太が好き | 何でもかんでもバリアフリーが嫌い |
職人が好き | 数字による評価ばかりすることが嫌い |
年月を重ねた美しさが好き | 新築の時が一番きれいな家が嫌い |
好き嫌いというだけでは片づけられないこともあります。
わかりやすくとてもシンプルな表現として使っています。
ここにご紹介するのは、一軒の具体的な住宅ですが、
そこには私たち羽根建築工房における
「家づくりに向かうときの思想/姿勢」が凝縮されています。
この「
HANE-ken
standard」
のありようをご紹介することによって、
私たちがどんな考え方をもって家づくりを行っているかをお伝えしたいと思います。
JA THE JAPAN ARCHITECT 33号
ANTONINRAYMOND
1999spring 新建築社 P131 より引用
日本の建築を愛し、近代建築の礎を築いた建築家アントニン・レーモンド。
私たちは、彼が提唱した住宅設計における次の5つの原理に深く共感しています。
「HANE-ken standard」は、この5つの原理に従って設計されます。
アントニン・レーモンドが日本の木造住宅を見たとき、彼の感性がもっとも震えたのは「構造即意匠」の美しさと合理性であったと思われます。それは“Direct”であり、“Simple”であり、さらには“Honest”でもあるからです。
日本の杉や桧、松といった建築用材は、極めて美しく(ベイマツなどと比べれば一目瞭然です)、それを見る人に深い安心を与えてくれます。そうした美しい木材を見せない近年の家づくりはわが国の建築文化、生活文化に大きな損害を与えているとさえ思います。
そして「HANE-ken standard」における特徴が、間伐丸太を屋根の骨組みに使うということ。いま、使われないことで問題になっている間伐材は、私たちにとっては宝物に見えます。合理的に“Direct”にその間伐材を磨き丸太として使うことで、さらに美しい、手づくりの木の家が生まれるのです。
「HANE-ken standard」における軸は、この「骨組み=意匠」にあります。
“構造即意匠”がわが国の木造住宅の何よりの特徴であり、美しさの根源です。
そして間伐された磨き丸太を使い、見せるのがHANE-ken standardの特徴。
車やパソコンを木や土、石でつくるべきだなんて決して思いません。でも、住まいにプラスチックやニセモノの材料、接着剤で貼り合わされた材料を使うことに、どうしても私たちは合理性を感じないのです。ただ安いだけ、ただ均一であるだけ、ただ薄っぺらな美しさを備えているだけ…。なんにもいいことはないと思うのです。
日本で育った木を“Simple”に、“Drect”に使う。これもまたごく自然で当たり前なことでしょう。先にも述べたように、この国で育つ杉や桧たちは、深い美しさ、強さ、耐久性を備えているからです。
木、土、石といった素材を正直に見せていく。そうした素材は住むほどに味わいを増し、落ち着いた美しい空間をつくり出してくれる。そんな住まいが“Economy”であることは言うまでもありません。
20年後
素の材料は住むほどに味わいを増し、
落ち着いた空間をつくり出してくれます。
① 構造材はすべて吉野産の杉、桧
吉野の林業は密植により、年輪が細かくまっすぐに通った木が育ちます。
計画間伐により伐採し、山で葉枯らし乾燥、
製材して3カ月~6カ月桟積み乾燥の後、建築用材となります。
② 土台に桧の赤味材を使用
防腐性能、防蟻性能が高く、めり込み強度が杉より高いためです。
注:桧と言えども、白太部分はでんぷん質が多く腐りやすく、蟻害にも遭いやすいので注意が必要です。
③ 柱や梁に杉の芯持ち材を使用
大きな力のかかる部分に外側の目の混んだ白太のところがくる為、
強度的に有利になるからです。
背割りは入れずに天然乾燥させているので、自然な割れが入りますが、
乾燥とともに強度的にはむしろ強くなっていきます。
④ 小屋組には「間伐材杉丸太」を使用
吉野ならではのまん丸で元末の口径差の少ない良質な材を、皮をむいて
丸太のまま使用します。
口径が細く、節のある間伐材は使い道が少なく山に捨てられることも多いですが、
こうした活用法で美しく味わいのある空間を構成することができます。
① 外壁はドロマイトプラスターを主材料とした「かきしりん」
耐水性、対候性、耐久性に優れ、凹凸のある表面が豊かで落ち着きのある表情を作り出しています。
② 内壁は竹下地に土を塗って仕上げる「羽根建壁(はねけんかべ)」
昔ながらの竹小舞を編んで土壁を作るより、現代の家づくりにも順応する土壁となり、
土の元来から持つ調湿性、保湿性、防火性能を得ることができます。
柱間には断熱材を施せるので、「省エネ等級4」に相当する断熱性能も確保できます
③ 土間は小石表情が優しい、三和土を雰囲気もつモルタル仕上
モルタルと言えばコテで押さえてしまうのではなく、色むらのある小石をちりばめて
丁寧にノロを拭き取って仕上げると、自然な風合いの土間ができます。
私たちが「間取り(基本プラン)」を考えるときの基本は“Simple”という発想。
しかし、単純化を追求するほど、精緻な計画が必要になってきます。無駄を省くということは「ちょうどいい間取り、寸法」を探していく作業になるからです。無駄を省きながら、ゆるやかに住む人の暮らしに合わせられる柔軟性を備えることも「HANE-ken standard」の特徴です。
また、間取りを考えるときには光や風、窓からの景色などの自然の要素も十分に考慮します(このあたりは「パッシブデザイン」のページをご覧下さい)。
そうして出来上がった間取によって、そこに暮らすことがとても心地よい空間が生まれ、それはもちろん“Economy” な家づくりになるのです。
住まいに本当に必要なものは何か?本来の住宅設計とは、そのことを追求するものであるはずです。私たちが考える「小さな家」とは、豊かな空間がありながらも、暮らしに必要なものがそこに凝縮されている住まいのことを指します。結果、従来考えられている住まいは大きすぎることに気がつきます。
そうした住まいでは、日々の暮らし、周辺の自然環境や四季の移ろいと建物との一体感が生まれます。また家具や光熱費、メンテナンス費用など、生活のコストも小さく抑えることができます。そうした身の丈に合った“賢い住まい”がいつか日本のスタンダードになればいいなと思います。
家づくりに使う木材は、大工さんがすべて加工するのが当たり前。
もしかすると、こんなふうに思っている人が多いかもしれません。でも現実は違います。とくに構造材と呼ばれる建物のフレームになる木材のほとんどは、プレカット工場と呼ばれる工場で加工されて建築現場にやってくるのがここ10年くらいで(2000年頃から)急速に当たり前になってきました。「工場プレカット材」にもよい点はあると思いますが、私たち羽根建築工房は「大工による加工(手刻み)」にこだわっています。その理由を以下に述べます。
家づくりにおいて「棟上」という工程は、竣工と並んで最大のイベントであり、とくに大工にとってはもっとも“意気”を感じる作業です。その棟上に使うのは構造材であり、その構造材が工場で機械によって加工されたものではなく、自分の手で刻んだものであることで、大工の意気は大いに上がることになるのは想像していただけるはずです。
もちろん工場プレカット材であっても、大工はそのプライドを賭けて棟上に向かっていくのですが、その家づくりにこめられる大工魂は違ったものになると思います。私たちは、大工の意気と腕を最大限に発揮してもらう家づくりが「良い家」をつくる最大の条件だと考え、よほどの理由がない限り、構造材は大工自身の手で刻んでもらうようにしています。
私たちがつくるのは、日本の木の優しさ、美しさ、香り、そして迫力を存分に感じられるような家です。木を見せることを「現し」などと呼ぶのですが、そうした「現しの家づくり」を繊細に、緻密に、豪快に行うためには、工場プレカット材を使うのは限界があります。優秀な大工は目の前にある木材をじっくりと見て、それをどこに、どのように使えば「最良の木づかい」になるかを見抜きます。完成したときの映像を頭に思い浮かべながら、木を選び、木を刻んでいくのです。だから、大工にとって「構造材をじっくりと見る時間」が重要になります。工場プレカットという方式では、そうした時間が十分に得られないのです。
工場プレカットという方式では、「加工の方法や種類」に限界があります。したがって、工場プレカット材を前提とした家づくりでは「工場プレカット加工の方法や種類」の範囲の中で木組みや空間を考えていかざるを得ません。「本当はこうやって組んだほうが美しいのに…」と思っても、プレカット工場では不可能な加工であれば、それを諦めなければなりません。「美しい木組みや空間」といった感覚的な話に限らず、「こうやって組むとさらに強い構造になるはずなのに、工場プレカットでは…」といった性能の話にも関わってきます。
つまり、手刻みによる施工の自由度の高さが設計の自由度を担保することになるわけです。設計する立場にある人が「性能のことも含めた、理想的な木組みや空間」を追求できるということです。
少し前まで、「棟梁」と呼ばれる人はレベルの高い手刻みができるのは当たり前でした。それが日本の家づくりにおいては当たり前だったからであり、その技術が進化しながら受け継がれてきたことによって美しい日本の木の家はつくられていたのです。それが、いまのような「工場プレカット材の時代」が当たり前になってくれば(90%以上にもなっているそうです)、手刻みができる大工は消えていきます。すでにきちんとした手刻みができる大工は高齢の人に限られ、若い大工にはその修行をする機会がなく、日本の高い大工技術は消えつつあります。
日本人のDNAには「日本の木」の様々な情報が刻み込まれていると感じます。そしてそれには「木の家での暮らし」が果たした役割は極めて大きいと思います。大工技術が変質し、日本の木の家が失われてしまえば、日本人の精神文化に大きな影響を与えてしまうと私たちは信じています。だから、まだ間に合ううちに、手刻みの技術を残していこうと考えているのです。
すでに住宅は「ストックの時代」に入っています。質の高い新築住宅を少しずつ建てながら、膨大にある既存住宅について、質を向上させるリフォームを進めていく時代が訪れています。
新築よりもリフォームのほうが圧倒的に大工の高い技術が必要です。既存住宅のほとんどは木造ですから、その木の骨組みの適切さをしっかりと読み取ることが求められますし、リフォームを進めていくにあたっても、高い「手刻みによる応用力」が必要になってきます。工場プレカットの新築ばかりやっている大工では、その応用力が身につきません。見た目をきれいにすることはできるでしょうが、耐震性を向上させるような本質を改善するリフォームはできないはずです。この問題は、住宅業界の中でもほとんど議論されていませんが、今後の日本の住宅を考えていく上で、実はとても大きなものだと思います。
ずっと長い間、日本では「森や木」に尊厳を感じ、感謝し、その恩恵を有難く頂戴するという文化が育まれてきました。その循環や関係性の中に大工があり、木の家がありました。これらがすべてつながることで、日本人は森や木とうまく付き合ってきたのです。このつながりが様々な形で切れてしまっているのが現代社会。日本の森や木を残し、うまく付き合っていくためには様々な知恵を絞らないといけないと思います。そしてその中に「手刻みの大工技術を継承し、美しい日本の木の家をつくる」ということが不可欠だと思います。私たちだけでは微々たる動きですが、同じ問題意識を持った工務店や建築家がつながりはじめ、大きな動きになってきました。私たちはこの動きをこれからも続けていきます。
人工照明と陽光の明るさ、どちらが心地よいか?
クーラーをかけた部屋と風がそよぐ木陰、どちらが心地よいか?
エアコン暖房と日向ぼっこ、どちらが心地よいか?
人にはそれぞれ好みがあるので、すべての人が後者を選ぶわけではないでしょうが、私たち羽根建築工房のメンバーは全員後者を心地よいと感じます。設備に頼らず、そうした“自然な心地よさ”を生み出す設計技術のことを「パッシブデザイン」と呼びます。私たちが取り組むパッシブデザインの住まいは、「冬暖かく、夏涼しい」を両立させます。
日本の伝統的な住まいが持っていた「夏の知恵」を活かしながら、近年になって発展した「冬の知恵」をうまく融合させるところが大きなポイントになります。
日射熱は相当に大きく、冬はそれを家の中に採り込み、夏はそれを遮断することが大変重要です。冬と夏で異なる、建物に当たる日射の特徴を把握しながら、大きなポイントになる窓について「日射の取得と遮断」を丁寧に考えていきます。
方位 | 建物(窓)への日射の当たり方 | 日射の取得と遮断の考え方 | |
冬 | 夏 | ||
南 | 低い角度から当たる | 高い角度から当たる |
・軒の出は「夏は遮断/冬は取得」ができるように調整 ・窓を大きく取って、積極的に取得 ・ガラスを取得しやすいものにしながら、必要に応じてスダレや格子網戸などでさらに夏の遮断を考える。 |
東、西 | ほとんど当たらない | 低い角度から当たる |
・窓は最小限に ・スダレ、格子、障子などでしっかりと遮断 |
パッシブ(passive)とは「受動的な」という意味を表す言葉ですが、建築用語的には、自然エネルギーを機械設備ではなく、建物の工夫によってうまく活用するという考え方を表します。この対義語であるアクティブ(active)は、機械設備を使って自然エネルギーを活用したり(例えば太陽光発電)、冷暖房する(例えばエアコン)という考え方を示します。アクティブな装置をゼロにすることは無理がありますが、私たちはパッシブをしっかり考え方上で、足らないものをアクティブで補うという発想が正しいと思っています。
日射の当たり具合を確認するためのスケッチアップによるシミュレーション。
光・風・視線の調節ができる格子網戸と内障子。しかもそれらを仕舞えばフルオープンにできます。
土壁には日本人の感性に響く風合いがあり、高い調湿性という機能を持っています。加えて、あまり知られていませんが、高い蓄熱性があります。パッシブデザインの研究が進み、うまくその蓄熱性を活用すれば「冬暖かく、夏涼しい」に向かうことがわかってきました。おそらく、土壁を使ってきた先人たちもこうした機能を感じていたのではないかと思います。私たちは「羽根建壁」を開発し、伝統的な土壁が持っている優れた機能を現代的に活かす家づくりを進めています。こうした取り組みによって、日本の家から消えつつある土壁が再評価されることに期待しています。
湿度の高い日本の気候では、土壁は最適な選択です。しかし、竹小舞を編んでつくる従来の工法はコスト、工期共に大きな負担になってしまいます。かといって石膏ボードの上に薄く塗った漆喰や珪藻土で土壁の替わりはできません。
竹を木ずりのように打つ「羽根建壁」は、気密性を損なわず自然な通気性を有した土壁を現代の工法で実現したものです。
塗り厚は総計約30mmで、十分な調湿性能が発揮されます。仕上げは漆喰、珪藻土、じゅらくなど選択できます。
古来から日本人は「窓を開け、風を通す」という暮らしを当たり前にやってきました。夏はもちろんのこと、春や秋も天気の良い日に風を取り込む暮らしは気持ちの良いものです。
しかし近年になってエアコンが普及し、機械による換気に関心が高くなり過ぎたことにより、風を通す工夫が退化し、風を通すことの重要性が見失われてきたように感じます。
一方でパッシブデザインの研究が進んだことで、理論的に風通しの良い住まいをつくる方法が確立されてきました。こちらの方向で家づくりを行うか、エアコンや換気扇に頼る家づくりに向かうかによって、風通しの良い住まいになるかどうかが大きく分かれます。もちろん、私たちは「風通しを大事にする家づくり」を選びます。
密集地でも光と風を取り込める窓を吹き抜けに設けた。
ウインドキャッチャーとなる開き窓でもスダレを掛けられるように工夫した。
近年のわが国の住まいにおいて、もっとも大きな変化のひとつが「欧米からの断熱技術の導入」です。このことによってわが国の住宅の断熱性能は飛躍的に向上し、冬の寒さは大幅に改善されました。しかし、とくにここ最近は、過剰と感じる高断熱化の動きが出ています。過剰な高断熱に向かえば、窓は小さくなり、夏の熱ごもりが生じ、1年のほとんどの季節を「窓を閉じて冷暖房する」という暮らしになってしまいます。こうした住まいと暮らしは、本来日本人が持っている感性に合わないように思います。私たちは一定の断熱性能は確保しつつ、先に述べた「冬の日射取得」「蓄熱性能の活用」のすべてをバランス良く考えます。
Q値(※) | 特徴 | |
省エネルギー基準 | 2.7W/m2K | 冬の暖かさとしては少し物足りない |
羽根建 | 1.9~2.5W/m2K程度 | 日射取得と蓄熱のバランスに合わせる |
超高断熱 | 1.0W/m2K(一例) | 多くの季節が「窓を閉めて冷暖房」の暮らしになる |
※Q値:建物全体から逃げる熱量を示し、数値が小さいほど保温性能が高い
パッシブデザインは今の時代、これからの時代に必ず求められることです。
しかし、数値ありきではなく、家づくりの過程が大事です。
この家は住む人にとって、心地よく快適で楽しく過ごせる家か?
このことを常に考えながら、自然とのかかわりを大事にし、機械に頼らず、メンテナンスもしやすいように…。
そのためには、昔からある夏の過ごし方、冬の過ごし方を参考にし、快適な生活ができるように工夫する。
その結果が適切な数値に現れてくるのが正しい順番ではないでしょうか。
羽根建はそういう考え方でパッシブデザインを進めていきます。
OMソーラーを通して、奥村昭雄さん・まことさんと出会いました。お二方とも素朴でおおらかでありながら、アントニン・レーモンド、吉村順三と受け継がれてきたモノの見方、考え方を確かに引き継ぎ、さらに次の時代へと導いているように感じました。奥村昭雄さんはOMソーラー(空気集熱式ソーラー)の考案者ですが、私はそうしたシステムよりも、お二方の設計思想の軸となっているパッシブデザインに感銘を受けてこの世界にのめり込んでいきました。また一緒に仕事をさせていただいて、私たちは次のようなたくさんの事を学びました。
地震や台風に強い家にするとき、何がもっとも大切か?
建物や家具の荷重で変形しない家にするとき、何がもっとも大切か?
それは「無理矢理、強引を排除する」ということです。建物を複雑にして凸凹をつけるほど、間取りを複雑にするほど、力の流れも複雑になり、どこかに無理が生じます。
建物をできるだけ正方形に近づけ、2階と1階の壁を揃え、耐力壁をバランスよく配置する。その基本ルールを守り、うまい間取りを考えていくのが本来の構造計画であると私たちは考えています。
適切な構造計画に求められるものは、次の2つです。
①建築時に地震や台風、そして自らの加重に耐えるように計画されている
②その構造が、年月を経ても確保される
こう考えたとき、いまの合板に頼った無理のある構造計画は、①の条件は満たしたとしても、②の条件を十分に満たすとは言えないと私たちは考えます。合板よりもムクの構造材(柱や梁)のほうが耐久性に優れているのは明らかだからです。
優れた我が国の伝統建築は、合板に頼らず、間取りと構造材の組み方によって適切な構造を実現してきました。また「骨組み=意匠」という考え方は、骨組み(構造材)の劣化が確認しやすいという利点も持っています。私たちはこうした我が国の伝統建築における構造の考え方を引き継ぐことが基本的なスタンスです。
優れた我が国の伝統建築は、合板に頼らず、間取りと構造材の組み方によって適切な構造を実現してきました。これらの写真は、そうした特徴を活かしたリフォームの現場です。
構造計画に限らず、私たちの基本はここにありますが、とくに構造計画においてこの姿勢が重要であると考えます。建築物が成立するもっとも基本的な要件は構造だからです。
伝統建築には「合板や金物などの便利な部材がない」という状況から生まれた優れた技術があります。「間取り=構造計画」といった考え方や、構造材をつなぐ優れた大工技術がその代表です。
一方、現代の理論は数学や物理学を活用して地震や台風に強い家のあり方を導くことができるというメリットがあります。しかしそれには限界や盲点があるのも事実です。
家づくりのプロに求められるのは、盲目的な伝統主義に陥らず、かといって現代の理論を過信しないことだと私たちは考えます。何百年も続いている“老舗”に共通するのは、伝統を重んじながらも、現代に合った商品をつくり続けていることです。羽根建築工房がこんな老舗になろうとは考えていませんが、住宅建築の分野で、こうした老舗が少しでも増えていくことを願いながら仕事を続けています。
ほとんどの建築物は、地震や台風の「水平方向にかかる力」を耐力壁(水平の力に耐える強い壁)で受け止めます。たとえば地震の力が働いて2階の耐力壁がそれを受け止めたとき、その力は1階に伝わります。そこで2階と1階の耐力壁が上下にずれていなければ、素直に力が伝わり、地震に耐えやすくなります。しかしそれがずれていれば、2階の揺れが大きくなり、2階から倒壊・崩壊していく可能性が高くなります。いまの一般的な構造計画は、2階と1階の耐力壁がずれていても、そこを合板でつなぐことで解決しようとします。
つまり、「間取りは間取り」「構造は構造」と分けて考えることで、合板に頼らざるを得ないようになっているのです。そうした考え方が蔓延することによって、「間取りしか考えない家づくりのプロ」を生み出してしまっています。
しかしそれは家づくりのプロとして正しい姿勢ではないと私たちは考えます。間取りは構造と一緒に考えるのが基本中の基本です。
間取りと構造を分けて考えたと思われる実際の例です。2階の耐力壁(ピンク)と1階の耐力壁(オレンジ)が上下でほとんど合っていません。
上のような建物では、このような変形が生じやすくなります。力がスムーズに流れるような構造と間取りの整合性を取ることが大切です。
所在地: | 大阪府堺市 |
家族構成: | 夫・妻・長女・次女 |
敷地面積: | 206.51 ㎡ 62.47坪 |
延床面積: | 103.35 ㎡ 32.26坪 |
Q値: | 4.58 W/㎡ K (施主了解) |
外壁: | 杉板張り |
壁断熱: | 土壁 ア70 |
内壁: | 土壁の上 珪藻土仕上げ |
そよ風: | 搭載 |
特徴: | 智頭杉、土壁、通り土間 |
所在地: | 大阪府大東市 |
家族構成: | 夫・妻・長男・次男 |
敷地面積: | 267.53 ㎡ 80.93坪 |
延床面積: | 114.06 ㎡ 34.50坪 |
Q値: | 2.63 W/㎡ K (施主了解) |
外壁: | かきりしん |
壁断熱: | パーフェクトバリアー ア70 |
内壁: | PB下地の上 珪藻土仕上げ |
そよ風: | 搭載 |
特徴: |
所在地: | 兵庫県川西市 |
家族構成: | 夫・妻・長女・次女 |
敷地面積: | 167.42 ㎡ 50.64坪 |
延床面積: | 106.54 ㎡ 32.23坪 |
Q値: | 2.28 W/㎡ K (施主了解) |
外壁: | かきりしん |
壁断熱: | パーフェクトバリアー ア70 |
内壁: | 羽根建壁の上 珪藻土仕上げ |
そよ風: | 搭載 |
特徴: |
所在地: | 大阪府枚方市 |
家族構成: | 母・娘 |
敷地面積: | 176.76 ㎡ 53.47坪 |
延床面積: | 94.82 ㎡ 28.68坪 |
Q値: | 5.56 W/㎡ K (施主了解) |
外壁: | かきりしん |
壁断熱: | なし |
内壁: | 羽根建壁の上 珪藻土仕上げ |
そよ風: | なし 空気循環パイプ |
特徴: |
所在地: | 兵庫県宝塚市 |
家族構成: | 夫・妻 |
敷地面積: | 176.86 ㎡ 53.50 坪 |
延床面積: | 101.03 ㎡ 30.56坪 |
Q値: | 2.45 W/㎡ K |
外壁: | かきりしん |
壁断熱: | パーフェクトバリアー ア100 |
内壁: | 羽根建壁の上 珪藻土仕上げ |
そよ風: | なし 空気循環パイプ |
特徴: |
所在地: | 奈良県生駒市 |
家族構成: | 父・夫・妻・長女・次女 |
敷地面積: | 791.36 ㎡ 239.39 坪 |
延床面積: | 106.35 ㎡ 32.17坪 |
Q値: | 2.32 W/㎡ K |
外壁: | かきりしん |
壁断熱: | パーフェクトバリアー ア100 |
内壁: | PB下地の上 珪藻土仕上げ |
そよ風: | なし 空気循環パイプ |
特徴: | 週末住宅、急斜面の上に立つ |
部位 | 仕上 | 備考 | |
---|---|---|---|
外部 | 屋根 | カルバリウム鋼板ア0.4 |
屋根上通気工法 |
外壁 | かきりしん | 掻き落とし仕上げ | |
建具 | アルミサッシ | ペアガラス/Low-Eペアガラス | |
基礎 | 鉄筋コンクリート | ベタ基礎 |
|
断熱 | 屋根 | Q1ボード | 遮熱面材付高性能硬質ウレタンフォーム |
外壁 | パーフェクトバリア | ペットボトル再生 | |
床 | カネライトⅢ種 | 押出発泡ポリスチレン板 |
場所 | 床 | 壁 | 天井 | |
---|---|---|---|---|
内部 | 玄関 | 柳生の細道 | 大地の息吹 | 野地板アラワシ |
広間・自由空間 | 杉板 ア30 | 大地の息吹 | 野地板アラワシ | |
台所・和室 洗面・便所 納戸 |
杉板 ア30 | 大地の息吹 | 杉板 ア30 | |
浴室 | 十和田青石 | 杉板 ア15 | 杉板 ア15 | |
備考 |
柳生の細道:天然土が主成分の床用左官材 大地の息吹:調湿の為の孔の量が段違いに多い稚内珪藻土壁 |
工事内容 | 価格 | |
---|---|---|
1 | 仮設工事 | 724,000円 |
2 | 基礎工事 | 1,048,000円 |
3 | 木工事 | 7,628,000円 |
4 | 板金・樋工事 | 574,000円 |
5 | 防水工事 | 430,000円 |
6 | 左官工事 | 3,053,000円 |
7 | 石張り工事 | 209,000円 |
8 | 金属製建具工事 | 507,000円 |
9 | 木製建具工事 | 654,000円 |
10 | 雑工事 | 765,000円 |
工事内容 | 価格 | |
---|---|---|
12 | 電気工事 | 1,246,000円 |
13 | 給排水工事 | 1,630,000円 |
14 | ガス工事 | 457,000円 |
15 | 諸経費 | 1,582,000円 |
合計 | 20,507,000円 |
消費税は含まれておりません。
別途:設計料、地盤改良、外構工事、空調工事、アンテナ工事、置き家具、カーテン、防蟻処理、上下水道申請費・市納金等、近隣対策費、登記等
部位 | 会社名 | 住所 |
---|---|---|
基礎 | 田中造園土木 | 大阪・寝屋川 |
木材 | ウッドベース | 奈良・吉野 |
左官 | 井上左官工業 | 奈良・奈良 |
塗装 | 創美建装 | 兵庫・尼崎 |
サッシ | 三協テック/LIXIL | 大阪 |
木製建具 | 安藤建具 | 大阪・城東 |
畳 | 畳・橋本 | 大阪・大東 |
洗い | 光建装社 | 大阪・堺 |
部位 | 会社名 | 住所 |
---|---|---|
足場 | 服部仮設 | 奈良 |
板金・樋 | 石附板金工作所 | 大阪・守口 |
防水 | 西牧防水 | 兵庫・尼崎 |
石張 | 中野産業/黒瀬タイル | 秋田・大館/大阪 |
キッチン | 羽根建築工房 | 大阪・旭区 |
電気 | 西嶋電気 | 大阪・堺 |
給排水 | 西設備/梶本水道 | 大阪/奈良 |
ガス | 江口設備/きんぱい | 大阪・大阪市 |
1998 年 | 羽根建築工房設立 | 大阪市 | 全施工棟数 | 内設計事務所 | 内自社設計 | 内スタンダード | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1999 年 | 百日紅の柱のある家 | 大阪市 | 7 | 2 | 1 | - | |
2000 年 | ヤマ・ライブラリー新築工事 | 西宮市 | 北澤建築設計事務所 | 4 | 3 | 1 | - |
2001 年 | 杉丸太の家 | 柏原市 | 羽根建築工房 | 7 | 4 | 2 | - |
2002 年 | 木構造住宅研究所新築工事 | 大阪市 | Ms建築設計事務所 | 7 | 4 | 1 | - |
2003 年 | ホタルの里の家 | 八尾市 | 羽根建築工房 | 14 | 6 | 2 | - |
2004 年 | 六甲の家 | 神戸市 | N設計室-永田昌民 | 12 | 6 | 2 | - |
2005 年 | G邸 | 奈良市 | 木曾三岳奥村設計事務所 | 12 | 6 | 1 | - |
2006 年 | Y邸 | 西宮市 | 広渡建築設計事務所 | 15 | 10 | 0 | - |
2007 年 | Y邸移築再生 | 奈良市 | 藤岡建築研究室 | 14 | 7 | 2 | - |
2008 年 | 東住吉の長屋改装 | 大阪市 | 羽根建築工房 | 14 | 7 | 2 | - |
2009 年 | 大美野の家 | 堺市 | 堀部安嗣建築設計事務所 | 14 | 7 | 3 | - |
2010 年 | 造園家の家 | 生駒市 | 一見設計工房 | 14 | 8 | 0 | - |
2011 年 | LunaHouse | 神戸市 | レミングハウス-中村好文 | 10 | 6 | 1 | - |
2012 年 | 通り土間のある家 | 堺市 | 羽根建築工房 | 12 | 6 | 2 | 1 |
2013 年 | 絵画を楽しむ家 | 大東市 | 羽根建築工房 | 14 | 5 | 5 | 1 |
2014 年 | 鼓滝の家 | 川西市 | 羽根建築工房 | 13 | 5 | 3 | 1 |
2015 年 | 鏡伝池の家 | 枚方市 | 羽根建築工房 | 16 | 8 | 2 | 1 |
2016 年 | 大今里の家 | 大阪市 | 羽根建築工房 | 11 | 3 | 2 | 1 |
2017 年 | 生駒山荘 | 生駒市 | 羽根建築工房 | 11 | 5 | 4 | 3 |
2018 年 | 大福の家 | 桜井市 | 羽根建築工房 |
長い歴史があり、わが国の林業技術を先導してきた吉野林業。そこで生み出される良質の吉野杉は、緻密で均一な年輪、美しい色合い、そして高い強度など、優れた特徴を持っています。
そうした吉野杉のよさをさらに広く知っていただき、「地域材で建てる、確かな技術での木の家づくり」を普及させていこうとして立ち上げたのが「棲香/吉野杉」という団体です。
HANE-ken standard は私たち羽根建築工房の設計思想を象徴し、また具体化したものですが、そこでは何よりもまず「良質で美しい構造材」の存在が大前提になります。吉野杉の普及、そして地域材を使った木の家の普及を図るために、木材供給サイドである㈱ウッドベースとも議論を重ね、生まれたのが HANE-ken standard なのです。
これからの日本の住まいは、しっかり地域材を使い、自然のエネルギーをうまく活用して心地よさと省エネルギーを実現し、つくり手の技術が十分に活かされた手づくりの家になっていくと確信しています。そうした住まいが、その家に暮らす人はもちろん、未来の社会を豊かに、幸せにするものだからです。
このHANE-ken standardには、そのすべてが詰まっています。私はこの取り組みにおける室内環境や省エネルギー性能についていくつかのアドバイスを行い、様々な検討を加えてきましたが、日本人が持っている、自然に対する繊細な感覚をとらえた、極めて優れた室内環境が実現されることになったと思っています。
きっと、そのことは住めばわかっていただけるはずです。
羽根建築工房は「Forward to 1985 energy life」に賛同する
省エネアドバイザー拠点です。
co-product by 棲香/吉野杉プロジェクト